その昔、人間になりたい妖怪ベロ、ベラ、ベムがいました。
しかし、ベンの従姉妹にあたる「ペン」と言う妖怪がいた事は世間では知りません。
この物語は、「ペン」の物語です。

ペンは、自分では、何者なのか知りませんでした。
地球外生物?それさえも知りませんでした。
物心ついた頃には地球にいて何時の間にかペンギンと暮らしてました。
ペンという名前も、「私はペンギンだ」と言う思いからです。
強欲、我侭、横暴、当然ペンギンのボス。
えさを自分で取る事はせず、運ばせては食べるだけ。
当然、太ります。
このころ世間では、「ブルーライト・よこはば」が流行(爆)
まさに遠目に見ても明らかに大きいペンギンらしき生き物。
それが、ペンでした。
ある日、何処からとも無く「声」がしました。
「ペン、お前は妖怪なのだよ。」
「ん?妖怪ってなんやねん。うちはペンギンやで」
「ペン、黙って聞きなさい。妖怪は地球では住めない。」
「いや、ちゃんと住んでるで、ここで」
「ペン!聞きなさい。地球は人間や動物が住む星。
これから言う事を守れば、お前も人間になれるんだよ。」
「ペンはペンギンやで。充分やで」
「ペン!!地球では人間になるのが、一番なのですよ。
言い付けを守って、早く人間になれるように励みなさい。」
「1.人前では、ペンでやんすと自己紹介すること」(爆)
「2.呼ばれたら、お呼びになりまして?と言うこと」(爆)
「3.妖しい話大好きと言う何かを作ること」(爆)
「この三つを守って、励むのですよ」.....
「オイ、コラ、またんかい、なんやねん」
しかし、素直なところもあるペン。考えます。
「そうか?ペンギンでは無かったん?」
「とりあえず、ここ、出てみよか?」
ペンの人間になるための旅はこうして始まります。
しかし、右も左も全く分かりません。
どうしたものか?
すると誰かこちらに来ます。
「何か聞く時は?と」「声」の守り事を思い出しました。
「あの〜、ぺんでやんす」(爆)
「は?どうされました?」
「え〜と、ここは、何処でしょうか?」
「うむ。迷子になったのですか?」
「お呼びになりまして?あ!違った!あ、はい。そうなんです」
「この道をこのまま行けば街に出ます。そこに行けば分かると思います。」
「ありがとうございます。ぺんでやんす」(爆)
こうして、そのまま進むペン。
普段全く動いてないためか、汗らしきものがどっと吹き出ます。
実は先ほど、訪ねた人は、「声」の主「ベン」でした。
何を差し置いても少し運動させてからだ。そういう配慮ときっかけを与えたのです。
「ま、言い付けは、守ってるようだ。」
街に向ってただ歩くペン。
こうして「妖怪」だった事が分かり、そして人間になるための長い物語は始まるのです

どのくらい歩いたのか?汗らしきものにまみれペンはヘトヘトです。
段々と賑わい、明かり、そんな気配を感じつつ空腹も覚えてます。
急に目の前が明るくなり、騒々しい声。
「ふ〜ん、これが人間か〜」
どうにか街に着いたペン。始めてみる人間に戸惑いを感じながらもある行列を見つけます。
「あそこに行けば何か喰えるかも?」
ペンも並んで見ました。
「お待たせしました。さ、手を出して。どうされました?」
「お呼びになりまして?ペンでやんす」(爆)
「はい、さ、手を出して」
「え〜と、て、手にトゲが刺さったんだな」(爆)
その行列は、「手相占い」でした。(爆)
「なんや〜、手出したら何かくれる思うがな」
「しかし、腹減ったな〜」
「人間の住むところは、キラキラ綺麗やんか」
「ん?なんや?この何とも言えん、ええ匂い」
腹ペコのペンの足は自然と匂いの方へ向います。
やはり行列が出来てました。「ケーキ屋」です。
「なんや、またかいな」
待つこと30分。
「お待たせしました。おいくつですか?」
「なんやて?年かいな?」.....
「はい、ペンでやんす。45歳になったんだな」(爆)
店から追い出されました。(爆)
「けったいやな〜。あ〜腹減ったな〜」
急な運動、空腹による疲労のせいか、睡魔が襲います。
公園のベンチでそのまま深い眠りに落ちます。
眠りの中でまた「声」がしました。
「ペン。人間は働いてご飯を食べる。しかし、お前にはまだ無理だ。
お腹が減ったら、水を飲みなさい。人間らしい一歩なのだ」
「....はいなはいな、水を飲んだらええのやろ....」
こうして、初めての人間の街での一夜は過ぎて行きます。

チュンチュン、カーカー、街の公園の朝は早いです。
「う〜ん、なんや、起こされてしもた」
一人公園のベンチで寝たペンは、疲れのせいか意外と爽やかに目覚めました。
「なんやまた、声があったな〜。水、飲んでみよか?」
昨日は、咄嗟に出任せの45歳と言ってしまったペンですが妖怪です。
実は、1045歳。人間に換算すると60歳。還暦です。(爆)
でも、妖怪の世界では、ほんの子供。
「とにかく、水や。腹減った〜」
近くに水のみ場があるのですが、ペンには分かりません。
目に入った、池の水を飲みました。
「う、美味いがな!メッサ美味いがな!」
「これは、ええ事や。あの声もたまにはええ事言うやんか」
何となく、空腹も癒え、落ち着いたペンの目に飛び込んできた光景。
同じようにベンチで寝てる人間が結構多い事。
「ふ〜ん、人間も妖怪も、同じちゃうかな?」
その中で、ペンに声をかけてきた一人の男。
「君も、人生が嫌になったのかい?」
「どうも、ペンでやんす。人間になりたいのです。」
「ん?う〜ん。やられたんだね〜。ま、しっかりしなさい」
新宿の住人と言われる人に励まされたペン。(爆)
しかしペンは新宿の住人を見習って、公園にささやかですが住居を構え、行動を共にするようになります。(爆)
「よっしゃ、これで、うちも人間らしくなってきたやん」
影から一部始終見ている「ベン」
「う〜ん....暫く様子を見るか」
思わぬ方向になってしまったペンの人間になるための旅。
しかし、水のみ場で水道を覚え噴水で体を洗う事を覚え、あまりものはタダと言う事も覚え・・・・
すこ〜しづつではありますが、人間らしい行動が身に付いてきているのは間違いありません。
体も本来のシャープな体系になり腰を低くしての「どうも、ペンでやんす」(爆)の挨拶もかなり、自然にそして様になってきました。
いまやすっかり新宿の住人ペン。(爆)
果たしてこの先どうなるのか?

気が付けば、新宿の住人のボスになりつつあるペン。
「う〜ん、どうしてあいつは、ああなんだ?仕方無い。最後のチャンスを....」
その頃、ペンは、いつものように
「どうも、ペンでやんす」(爆)
「これ、貰っていいでやんすか?」(爆)
「あ、ペンさん」
「お呼びになりまして?」(爆)
「これも、持っていきな」
「どうも、ペンでやんす」(爆)
残飯あさりが日課でありまた生きる手段。

「ペン。私だ。大事な事忘れてないかな?」
「お呼びになりまして?え〜と?」
「妖しい話大好き!と言う何かを作る事だよ。
いつまで、ここにとどまっているつもりかね?」
「は〜、だって、凄い快適やし」
「ペン。人間になれなくてもいいのかい?」
「お呼びになりまして?え?もう人間になったんでは?」
「一つ忘れている。それを実行しなさい。ここを出るのです。」
「そうでやんすか。」
「そうやった、作らなアカンかった。」

いよいよ人間になれるかどうかの旅に出ます。
しかしペンには何かを作ると言う思考がありません。
ペンでも出来る事。それは、妖しい話を真似して書く事。
仕方ありません。早速、妖しい話を探します。
すると、人間社会には、妖しい話があふれてるもので所謂「ねた」探しには苦労しないで済みそうと感じたペン。
片っ端から、パクります(爆)
このペンという妖怪は今までの流れでも分かるように、自分で何かをするのでは無く楽なほう楽なほうへと向ってしまう性格のようでこの性格は人間にかなり近い、一番人間に近い妖怪かも知れません。

パクり作業も終わり(爆)
ペンなりに編集し、1冊の「本」を完成させました。
「妖しい話大好き!」
しかし、見られた代物ではありません。
なんちゅう色使い、デザイン、あまりにも酷い(爆)
しかしペンはルンルンです。
「これで、人間になれる!」
とにかく誰かに見てもらわなければなりません。
人間が一番多いと思う街まで行きその一角に場所を構えます。
「どうも、ペンでやんす、本見てください。」
「どれどれ、う!これは君が作ったのかい?」
「お呼びになりまして?そうでやんす」
「可哀想だが、これは酷い」
9割以上が、こういう反応でした。
ペンには、何故なのか分かりません。当然です。
しかし人間社会の面白いところ。
「うん、これは素晴らしい!」
類は友を呼ぶ。1割は絶賛です。

こうして、約束事を3つやり遂げたペン。
「妖しい話大好き!」に賛同してくれた人間と何処へとも無く姿を消します。
果たして人間になれたのか?それとも.....

「妖怪人間 ペン」(完)
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